陽だまり

彼はそこにいた。 『あの日』と同じような暖かい陽射しがサイザーの体を包んでいる。 戦いが終わった今は、その陽射しがいつもより増して心地よく感じられる。 "彼"・・・・ライエルは廃城の階段で気持ち良さそうに座っていた。 ライエルの後ろ姿を見つめながらサイザーは、自分の手の中にある白い羽根を握る。 それは決戦を向かえるほんの少し前の事だった。 ライエルは暖かい陽射しに誘われて、少しの間、野原に寝転がって空を見上げていた。 「ライエル・・・・?」 「え。あっ・・サイザーさん・・・・!!」 覗き込むように顔を出したサイザーを見て ライエルは慌てて飛び起きた。 腕についた土をはたいて取ると、にっこりと笑って上を見上げた。 「どうしたの?」 「いや・・・何してるのかって思って。」 彼の視線から逃げるようにしゃがみこむとサイザーはライエルの顔をじっと見つめた。 見つめられた方は困った様な顔をして首をかしげる。 「あの・・・顔に何かある?」 いつまでもそうしている訳にもいかないので思い切って話し掛けた。 サイザーは引き戻されたように目をそらした。 ふとサイザーの右手を見ると何かを持っているようであった。 「サイザーさん、何持ってるの?」 「なっ・・何でもないっ!!」 右手を後ろにまわし、真っ赤になりながら誤魔化そうとするので ライエルはひょい、と後ろに周ってサイザーの腕を見た。 「は・・・羽根・・?」 「あの、だから・・その・・・・・・」 サイザーは羽根を握り締めて俯いた。そのまま少しの間黙ったままだったが、 腕を上げて、羽根をライエルの胸の前に突き出すと「返す」と小さく言った。 ライエルはサイザーが羽根を持っていてくれたことに驚きか感激かよく分からない感情が湧いて しばらくサイザーの手の中にある羽根と顔を交互に見ていた。 「ぼ・・・僕が持ってても・・・いいの?」 「駄目だったら返さないだろ!!」 そういえばそうだよね・・・何となく納得しながらライエルはそれを受け取った。 ずっと大切にしていた真っ白な羽根・・・。 まさか彼女が持っていてくれたとは・・・。 少し考えるように上を見上げる。 「ライエル・・・?」 そしてゆっくりと目線をサイザーに戻すと彼女の手を取り、羽根を静かにのせた。 「持ってて・・・くれないかな?」 サイザーがまじまじと手の中のものを見ているとライエルはサイザーの手を握った。 「この戦いが終わってからその羽根をくれないかい?――そうしたら僕、絶対に死ねないでしょう?」 冗談混じりに彼は言った。 「また・・二人で話をしよう。」 サイザーを包み込む暖かい陽射しのような微笑で。 「・・・・・うん」 ――――そして、戦いが終わって。 彼は変わらない姿でそこにいる。 風が頬を撫でた。 とても、優しい風。 自分の気持ちに気付いても、それを伝える事が、今はできないかもしれない。 でも この羽根に想いをこめよう。 言葉では表せれないこの想いを・・・・。 きっと彼は受け取ってくれるから。 サイザーは大きく深呼吸をして歩き出した。 「――――――――ライエル」 彼は優しい陽射しのような微笑で振り返った。    >>>>>>>>>>>>>>> 「羽根の行方」の話だったんですが・・・・。 28巻以降にぱったりと一度も出ることのなかったこの羽根。 まさか戦いで紛れてなくなってしまったのかいやいやそりゃないだろ(葛藤中) ・・・というわけで、こんな話です。