狂おしいほどに あなたを愛しているのだと気付いた。 アズリア手元を眺める。 薄紅を基調とした豪華なカードが、彼女宛だと示す流麗なサインと共にそこにはあった。 微かな重みであるはずそれを鉄のように感じながら、そっと息をつく。 学内の敷地である校舎裏の公園。 滅多に人のこない木陰のベンチ。 アズリアにとっては数少ない心休める場所だった。 しかしそれは彼女に限ったことでもない。 「アズリア!」 いそいそと駆けてくるこの男もまた、此処を気に入っている一人。 その他には誰も知らないけれど。 揺れる赤髪を見つけると、アズリアは絢爛に主張するカードを足元の鞄へ潜ませた。 何もやましいことはないけれど、何となく彼には見せたくなかった。 レックスは駆けよってくると、躊躇うこともなくアズリアの隣へ腰かけた。 「えぇと、あの。あのさ、アズリア」 「どうしたんだ?」 もぞもぞと落ち着かない彼をなだめるように声をかける。 しばらくごにょごにょと漏らして、レックスは勢いこんで言った。 「今度の休み、暇?」 「今度の休み?」 首を斜めに傾ける彼女に、レックスは畳み掛けるように勢いそのまま言い迫った。 「そう!あのさ、シルターン自治区でお祭りがあるんだって。」 「お祭り…」 鸚鵡返しを続けるアズリアから拒否の匂いはしなかったため、 レックスは誘い文句をポンポンと続けた。 「俺、シルターン流のお祭りって見たことなくてさ!アズリアは?」 「いや…ないが」 期待したような瞳でこちらを見つめる視線が痛い。 最初は要領を得なかった話が、断片が集まり見えてくる。 しかし彼の意図を察知した途端にアズリアの気分はより重たくなった。 何故こうも世の中というものは上手く回転してくれないのか。 「うんうん!だからさ、一緒に…」 「無理。」 呼びかけも聞かずして即答。 言葉を遮るようにして出されたそれは、一瞬にしてレックスの動きを固めた。 ヒートアップしていた体と言葉は一気に重力と同じ方向に落ちてゆく。 「興味ないの?お祭り」 寂しそうに笑うレックスを極力視界に入れないよう、 アズリアは鞄から先のカードを掴み出した。 見てしまえば「仕方ないな」と答えてしまう自分が居るから。 今回ばかりは彼に流されてはいけないのだ。 「実家で用事が…あるんだ。」 「用事?」 これが?と尋ねるように、彼女の取り出した薄紅色のカードを差し示す。 アズリアは頷いて、一度半分に折られたカードを開く。 日付を確認しても、やっぱり結果は変わらない。 何度も見た日付そのままだった。 「従姉の、結婚式…なんだ。」 ++++++++++++++++ WEB拍手連載でございます。 軍学校のグダグダというか色々です。(解り難) 拍手での連載時はサモ4未発売だった為、色々と設定が公式と違います。ご容赦下さいませ。