現パロレクアズ

「おめでとう!アズリア!」 「あぁ……お前もな。おめでとう」 長い冬を越えた春。 レックスとアズリアは、数字の羅列する掲示板の前で顔を見合わせ笑った。 まだ春を迎えて間もなく、コートを着こんでしまわないと指先まで痛く固まってしまうが、午後の麗かな日差しがそれを溶かしていくようだった。 自分の番号が貼りだされているのをしかと見届けた二人は、悲喜こもごもの空気を纏った場を離れ、足取り軽く構内を後にする。 「なんていうか…拍子抜け。案外あっけないよね。  あれだけ時間掛けてマジメに勉強したのに、最終的にはこの書類一枚に収まっちゃうんだ。」 レックスの腕には、合格証明書・その他諸々の書類が入った封筒が抱えられている。 自分のこれまでの努力の結晶と結果が、この封筒の中にあるものだけだとしたら、それはかなり寂しい。というか、空しい。 「ふん。私ほど勉強してない癖に何言ってる!正月の恒例行事を一通り完遂する受験生なんて、不真面目以外何者でもない。  …それに、これがゴールだなんて、思っていないぞ。私は。」 彼とおそらく同じ質量を持っているであろう封筒を、肩に掛けた鞄に押し込んで、アズリアは背筋を伸ばす。 「また4年間の腐れ縁、か」 「学部は違うけどね。よろしく!」 「…お前、これからどうするんだ?」 差し出された右手を颯爽と無視し、彼女は青い瞳を凝視する。 早くに両親を無くした彼は、高校の寮に下宿している。 当然、卒業したら出て行かなくてはならないし、第一この学校まで通うのには遠すぎる。 だとすれば、通常、話はひとつにしか纏まらない。 「うーん…父さん達が遺してくれたお金がまだ少し残ってるから、引越し代とか敷金だとかはなんとか出来そう。家具とかもね。  一応これから部屋探しに行こうと思ってる。あー…バイトも探さないとね」 寄るものの無い彼は、自立をする必要があった。 早く社会に出て、一人で生活が出来るようになるために、就職をするという選択もかなりの有力候補。 レックスも、かなり悩んでいた。 しかし、その選択肢を打ち壊したのは、他でもないアズリアだった。 彼が教師になりたいという夢を持っていたのを知っていたから。 色々なものを失くして諦めなくてはならなかった彼に、夢まで捨てさせてしまうのは嫌だったから。 多少今では強引すぎたか、と反省するくらいの勢いで、進学へと歩を進ませた。 結果、4年間彼は多忙な生活を送らねばならなくなってしまうのである。 奨学金だけでは授業料や生活費までは賄えない。だとすれば、アルバイトに励む他はないのだ。 正直、それは、心が痛む。 最終決定を下したのは彼自身であるが、強引に話を進めたのは自分である。 なんとか、彼の負担を軽く出来ないだろうか。 考えた末、ひとつ思いついてしまった。 自分の生まれを利用する、非常にあくどい、他力本願なものであるけれど。 「…部屋は、探さなくてもいいぞ。」 「………え?」 「…う、うちに……あ、いや…  私の部屋に、住まないか?」 「…はい!?」 レックスが眼を見開いて驚いている。当然だろう。 アズリアは頬が熱くなるのを自覚しつつも、彼から目線を逸らさず、続けた。 「わ、私も一人暮らしなんだ。別に、私は最低限のものがあれば良いんだが、父が…  レヴィノスの娘を外に出すのだから、小さな部屋になんて住まわせない!と言い出して… …部屋が、余ってしまっているんだ。」 「ア、アズリア…?」 「学校から近いし、徒歩3分くらいでコンビニはあるし、部屋からの眺めも綺麗なんだ。  …や、家賃も勿論貰わない!光熱費もある程度納めてくれればいいし、食費も…私が多く作ってしまうこともあるだろうから… その分はお前が食べれば良いし…………どう、だ?」 もはや、自分が何を言っているのか分からない。 ただ呆然と自分を見るレックスの瞳が見えるだけだった。 「えぇと…本当に、いいの?」 「い、いいから言ってるんだ!嫌ならいいんだ!聞かなかったことにしてくれ。」 「ちょ…っ!そうじゃなくて!…ねぇ、分かってる?」 「何が」 「コレ、同棲しようか?ってお誘いじゃないの?」 「……!そんなに大層なものじゃない!お前が私の家の部屋に居付くだけだ。」 「でも、アズリアと二人暮らし。…俺は、すごく嬉しいんだけど。  君がそこまで言うなら、俺は遠慮しないよ?君と一緒にいる時間が増えるチャンスなんて、頼まれたって逃がさない。」 いつの間にか、驚愕で固まっていた顔に、朗らかな笑みが浮かび始めた。 半端なく嬉しそうで、その顔を見ただけでアズリアは十分満足だった。 「恥ずかしい事をぺらぺらと…!まぁ、決まりだな。  …よろしく、レックス」 「あぁ、よろしく。アズリア!」 +++++++++++++++ みたいな話を漫画で書きたかったんだけど撃沈。。。 大学生パロなんです…同棲レクアズが書いてみたかっただけです… あと、アズリアお嬢様で部分的に甘やかされてたらモエー