ぎゅぎゅぎゅー

近づきたいと思っていたのは、おたがいだった。 きっかけさえあれば、いつだって。 誰も禁じてなどいない。咎めの声など聞こえることもない。 断罪しているのは自分自身。 だが、律した所で結局は求めてしまうのが口惜しい。 いつかは離れてしまうと分かっていても 決して交わる道ではないと分かっていても その温もりを求めてしまうのは、止められない。 足を滑らせたアズリアを、レックスが抱き寄せた瞬間、 止めようとしても止められないものなのだと、嫌でも納得させられた。 「もう大丈夫だから。離せ、レックス」 「…嫌だ。…って言ったら?」 「は?一体何訳分からないことを」 「…アズリア、ちゃんとご飯食べてる?  まさか、ラトリクスで未だに病人食じゃないよね?」 「いや、元々けが人だから、病人食を食べていたのでもないが…  ………というか、雑談するなら離せ。」 「嫌だね。もっと食べなきゃ駄目じゃないのか?  君、隊長なのにすごく動く子だし」 「食べても筋肉がつかないんだ。…軍人向きじゃないよな」 「ふうん…確かに、学生のころからそんなに筋肉質で無かったな。  俺としては大歓迎なんだけど」 「ふん、もう少し筋肉を上手くつけられた体なら、お前なんて目じゃなかったよ」 「あー、違うって。そう言う意味じゃないって!」 「…何が?」 「気持ち良いよ。君を抱きしめるのは。  柔らかくて、良い匂いがして、すごーく落ち着く」 「…………それは、どうも。  リラックスしてくれるのは分かったから、離せ」 「離して、良いの?」 「………」 「俺はもうちょっと、君をぎゅーっとしたままで居たいんだけど、駄目かな?」 「………」 「ねぇねぇ、俺はアズリアを抱いてたらすごーく気持ち良いんだけど、君は?  俺に抱き締められて、どう?答えが出るまではぎゅっとしててあげるから  是非とも意見を聞きたいな。」 「……好きに、しろ。」 「いいの?」 「私だってこの場所は、落ち着くから、な。」